日本は難民の受け入れが少ない?認定率が低い理由を解説
この世界には異常気象や資源不足など、解決すべき課題がたくさん存在していますが、難民問題もその1つです。日本では身近に感じられない出来事かもしれませんが、難民問題は世界中で起こり、受け入れが必要とされています。
そのため、難民問題に対して意識が低い日本は、世界から非難されてしまうことも。今回は日本と難民問題の関係性についてご紹介します。
難民問題で世界から批判される日本
まずは難民問題の概要と、日本の対応を確認していましょう。
難民問題とは
難民とは「紛争や内戦によって迫害を受けた、もしくは受ける恐れがあり、命の危険から他国に逃れた人々」のことを指し、これは1951年の国際連合全権委員会議によって採択された「難民の地位に関する条約」によって定義されました。
難民が世界にどれだけ存在しているのか。それはUNHCR本部が2023年6月に発表した年間統計報告書「グローバル・トレンズ・レポート 2022」に記載されています。これによると2022年末の時点で紛争や迫害により故郷を追われた人は1億840万。この数は全世界人口の1%以上です。
難民が発生する原因は、紛争や人種差別、自然災害などさまざまであり、帰る場所を失った人々に対し、世界がどのように手を差し伸べるべきか、常に問題視されています。
日本の難民受け入れ
UNHCRによると2020年における世界の難民受け入れ国ランキングは以下の通りでした。
- 1位:トルコ 370万人
- 2位:コロンビア 170万人
- 3位:パキスタン 140万人
先進国としては、ドイツが5位にランクインし、その数は120万人。アメリカは6位となり、30万人を受け入れています。
参考:UNHCR Global Trends in Forced Displacement - 2020
しかし、日本はランキング外。法務省によると、2020年に日本が難民と認定した外国人は、たったの47人と明らかに他国と比べて少ないことが分かります。そのため、日本は海外から難民問題に対して消極的であると批判されることもあり、今後の動向が注目されているのです。
なぜ日本は難民認定率が低いのか
では、なぜ日本は難民の受け入れに消極的なのでしょうか。それには以下のような事情が絡み合っているのでした。
難民認定の基準が厳格
難民とは、難民条約によって定義されていますが、具体的な基準が定められているわけではありません。そのため、同じ状況にある人々でも国によっては難民に認定する場合もあれば、認定しない場合もある、というケースも。
そして、日本の難民に対する解釈は非常に厳しく、難民認定申請が却下されることは少なくありません。専門家によっては、日本の解釈は難民保護の意図を外れている、という指摘もあり、他にもさまざまな意見が寄せられています。
就労目的の難民申請を防止
2010年、日本は難民認定申請者に対し、一律で就労を許可しました。すると、避難生活を強いられ支援を必要としている人々ではなく、出稼ぎを目的としている人々による申請が急増する結果に。
そのため、2018年に一律で労働許可を廃止。各国の大使館に知らせ、難民認定申請の基準をさらに厳しくしました。つまり、日本は偽装難民の在留を防止するためにも、基準を厳しくしているという側面もあるのです。
難民認定の手続きが困難
日本における難民申請は、手続きが非常に困難であることも原因だと指摘されています、なぜなら、審査の際に使われる言語の多くが日本語で行われるからです。
例えば、面接では適切な言語による適切な通訳が手配されず、証拠書類も日本語による提出が求められています。さらには、面接の録音や録画はなく、調書も日本語で作成されているのです。
そのため、証拠資料を日本語に翻訳できる申請者は少なく、翻訳の費用を用意する支援もないため手続きはほとんど不可能な状態となります。手続きの基準がフェアかどうか、という点も日本が抱える難民問題にとって重要な課題と言えるでしょう。
難民を受け入れるメリットとデメリット
難民を受け入れることで、何かしらのメリットがあるのでしょうか。また、受け入れに慎重ということは、何かしらのデメリットがあるとも考えられます。難民受け入れのメリット・デメリットを確認してみましょう。
メリット
まず、難民を受け入れることは、単純に「困っている人を助ける」という人道的な行為です。そんな人道的な責任を果たすことは、国家としての信用が得られ、発言力も高まると言えるでしょう。
また、難民を受け入れることで労働力が増えるというメリットも期待されます。日本は人口減少の傾向にありますが、労働力の需要は高まっている状況です。そのため、このままでは労働不足に悩むことになります。
過去、移民が増加したチリは労働力を獲得し、経済にプラスの影響が出たというケースもあるため、移民の受け入れに関しても同様の効果が期待できると言えるかもしれません。
デメリット
難民を受け入れることで犯罪増加やテロの危険性も否定できません。実際、2015年にフランスで起こった同時多発テロ事件では、難民として入国した人間から実行犯が出ています。
ドイツでは2015年12月31日から2016年1月1日にかけて、後に「ケルン大晦日集団性暴行事件」と呼ばれる事件が発生。これは集団強盗・性的暴行が続けて発生する事件でしたが、その容疑者の多くが難民だったことが判明しています。難民審査の厳しさが批判される日本ですが、このような事件を対応するのは難しいだろう、という支持の声も少なくありません。
他にも、難民が自立して生活できるまでの費用は、受け入れた国が負担することになるため、支援コストの発生もデメリットの1つだと言われています。税金を難民支援に使うのなら、自国民に使うべきという声もあり、積極的に受け入れを行った場合は、国内からの批判が大きくなるとも考えられるでしょう。
困っている国を支援する意外な方法
このように、日本の難民問題は複雑な事情が絡み合っています。しかし、難民が発生してしまうような国を何かしらの方法で助けたい、と考える人も少なくないでしょう。
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