着せ替え人形の歴史の意外な起源!玩具だけはでない深い役割とは
着せ替え人形と言えば、「子供のおもちゃ」というイメージが定番です。しかし、その歴史は意外にも、玩具が起源ではありませんでした。今のように子供が遊ぶようになるまでに、さまざまな役割を担い、形を変えてきたのです。
着せ替え人形の歴史を知ると、時代の流れが見えてくる。そう言っても過言ではありません。
今回は、そんな着せ替え人形の深い歴史について紐解いていきましょう。
着せ替え人形の歴史!誕生と普及をたどる
着せ替え人形は、いつ頃どのように誕生したのでしょうか。その歴史について深堀りしていきます。
ファッションの伝達がはじまりだった
着せ替え人形の始まりは、1300年代頃のフランスだったとされています。当時のフランスでは、宮廷で流行していたファッションをヨーロッパ中に伝えるために人形が使われました。等身大の人形にフランス宮廷の衣装を着せ、イギリスの女王に送ったのが始まりだとされています。
つまり最初の着せ替え人形は、現在のファッション誌のような存在だったのです。
その後のフランスでは、衣服の注文者の等身大人形に生地のサイズを合わせて縫製したり、衣装店のショーウインドーで販売用の衣服を着せた人形を飾ったりなど、着せ替え人形はマネキンとしての役割を持つようになりました。
着せ替え人形の火付け役「バービー」の誕生
着せ替え人形が子供に玩具として愛され始めたのは、1870年代ごろのフランスだったとされています。ファッションデザイナーが制作したミニチュアの衣装を身に付けた、「ビスク・ドール」と呼ばれる少女人形が作られ始め、子供から大人まで親しまれるようになりました。
その後、1800年代後期から1900年代初頭にかけて、アメリカやドイツ、イタリアでも少女の姿をした人形が作られ、現在のような”玩具としての着せ替え人形”が誕生したとされています。
第二次世界大戦後は、丈夫でコストの安い樹脂人形の生産が開始。1959年にはアメリカのマテル社が制作したバービー・ドール人形が世界中で流行し、その影響により世界中でさまざまな着せ替え人形が誕生していきました。
着せ替え人形の歴史を彩る商品・ブランド
ここからは、着せ替え人形の歴史を語る上では欠かせない、5つの人気商品やブランドをご紹介します。
リカちゃん
1967年に旧タカラ社から初代リカちゃんが発売されました。リカちゃん発売以前の着せ替え人形は、外国人がモデルの大きなサイズ(約30センチ)が主流でした。一方で、リカちゃんは子供の手の平に収まる約21センチの小さなサイズ。性格や年齢(11歳の小学5年生)が細かく設定され、日本人とフランス人の混血など、当時の人々が憧れる家族設定がされていたことも特徴です。
時代の流行に合わせて、リカちゃんの家や衣装、家族構成などが変化し続けていることも魅力の1つです。現在ではリカちゃんは子供だけでなく大人にも人気があり、「リカ活」と称して着せ替えを楽しんだり、一緒にお出掛けしたりする様子をSNSに投稿する大人もいます。
バービー
バービーは1959年にアメリカのマテル社が発売した、世界トップシェアを誇る着せ替え人形です。ヨーロッパで人気だったマスコット人形「ビルド・リリ」をヒントに開発され、世界中で流行した着せ替え人形の代表的な存在となりました。
当時の子供用の人形は、男の子の人形にはさまざまな職業がある一方で、女の子の人形は母親や病人のお世話係など種類が限られていました。男女関係なくどんな職業にでもなれるというメッセージを伝えるため、バービーは発売から60年間で約200種類以上の職業の人形を発売しました。
ジェニー
ジェニーは、旧タカラ社がマテル社のバービー人形を日本で発売する際に制作した「和製バービー」が由来の着せ替え人形です。1986年にマテル社との契約が終了したことで、バービーから「ジェニー」に名前を変えて発売されました。
同社が販売しているリカちゃんは幼児から小学生がメインターゲットであるのに対し、ジェニーはリカちゃんより上の年齢層をターゲットにしています。そのため、ジェニーの年齢設定は17歳の高校生と、リカちゃんより年上。サイズも約27センチと大きく、着せ替え衣装も大人っぽい印象のものが多い特徴があります。
メルちゃん
メルちゃんはパイロットインキ社が1992年に発売を始めた、お世話できる幼児向けの着せ替え人形です。
お風呂に入れると人形の髪の色が変化したり、哺乳瓶からミルクが減っていくように見えたりなど、リアルなお世話を体験できます。2003年にはメルちゃんのお友達「あおくん」の前身となる男の子の人形が発売され、男の子も人形でお世話遊びをしやすい時代になりました。
ブライス
ブライスは1972年にアメリカのケナー・プロダクツ社が発売した、大きな頭と瞳が特徴的な着せ替え人形です。
発売当初は流行することなく数年で生産終了に至りましたが、2000年にブライス人形の写真集が発売されて話題に。さらに2001年にはファッションビル「PARCO(パルコ)」のCMの広告モデルにブライス人形が抜てきされたことで、日本で人気になりました。
同年に旧タカラ社から「ネオブライス」としてブライスのレプリカが販売され、世界でも注目されています。現在では、ファッションブランドやアーティストとのコラボレーション商品が販売され、大人に人気の着せ替え人形の1つとなりました。
長い歴史を誇る着せ替え人形の役割とは
ファッションの伝達や、ままごと遊びを通した家庭や社会の体験まで、着せ替え人形は長い歴史の中で幅広い役割を担ってきました。
しかし、時代の流れとともに人形の衣装や職業、家族構成などが変化していく様子を見ると、着せ替え人形には時代ごとに異なる「人々の憧れ」や「目指したい社会」が反映されていることがわかります。
女性の社会進出・男性による育児・人種の多様性など、着せ替え人形には「時代ごとに変化する社会のあり方」を子供たちや親に伝える役割もあるのではないでしょうか。
着せ替え人形の処分を検討しているなら
着せ替え人形は人型をしているためか、処分しにくいと感じている人もいるかもしれません。
しかし、着せ替え人形は現在も子供から大人まで愛用者が広く、長く愛用されやすい玩具でもあります。捨てずに、誰かに使ってもらう選択肢も検討してみてはいかがでしょうか。
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