社会問題
2025/1/27

資源の呪いとは?原因や事例など概要を分かりやすく解説

天然資源が豊富な国では、その資源を輸出することで外貨を稼ぐことができます。しかし、資源が豊富な国ほど経済成長が進まない「資源の呪い」と呼ばれる現象があることをご存じでしょうか。

富をもたらすはずの資源がなぜ呪いと言われるのか。今回は、その原因や事例をわかりやすく解説します。

資源の呪いとは?経済成長が進まない意外な原因

資源が呪いと言われる原因や、経済成長が進まない理由をご紹介します。

資源の呪いの概要

資源の呪いとは、天然資源が豊かな国ほど経済成長が遅くなり貧困に苦しむ現象を表す経済用語です。アメリカの経済学者ジェフリー・サックスを筆頭に多くの研究が成され、実際に資源の豊富さと、貧しい経済成長の関係が多くのケースで当てはまることが判明。そのため、天然資源は経済にとって祝福ではなく呪いだと言われ、「豊富さの逆説」とも呼ばれています。

なぜ経済成長が進まないのか

富をもたらすはずの天然資源が、経済成長を阻害してしまうのはなぜなのか。その主な原因を3つご紹介します。

1.資源への依存

資源国では、資源をそのまま輸出することで多くの収入を得られます。そのため、新たな産業を育てること(工業化)や生産性を高める努力をしなくなります。

また、豊富な天然資源の輸出により自国通貨の為替レートが上昇し、労働者の賃金も上がります。その結果、他の輸出製品の国際競争力が低下し、自国の産業が衰退しまうのです。この現象はオランダで最初に発生したことから、「オランダ病」と呼ばれます。

これらのことから、資源国では経済のモノカルチャー化(単一化)が進み、資源への依存度が高くなります。

2.資源枯渇と不安定な収益性

天然資源には限りがあり、かつ価格変動が激しいという特徴があります。資源産業に依存した脆弱な経済は、資源の枯渇や資源価格の暴落による経済ショックに絶えられません。その結果、資源国の経済は一度繁栄しても一気に衰退する危険性が高くなります。

3.政治腐敗と独裁

資源収入が多い資源国では、国家運営を国民の税収に頼る必要がなく独裁政権国家になりやすい傾向があります。その結果、一部の権力者が利権を握り賄賂やキックバックなどの政治汚職が蔓延。民意を無視した資源開発を行って土地を荒廃させ、インフラや社会福祉などを後回しにするため、国民との関係性が悪化します。すると国民の反政府活動や暴動を恐れて軍事費を優先するように。これらがすべて経済発展の障害となります。

紛争のリスクも

資源への依存度が高い国は、紛争リスクも高くなる傾向があります。資源を巡って紛争が起きたり、資源を売って得た外貨が反政府組織の武器購入に使われたりするためです。紛争を激化・長期化する原因となった天然鉱物やダイヤモンドは「紛争鉱物」「紛争ダイヤモンド」などと呼ばれています。

資源の呪いの事例とは?経済破綻の恐れ

資源の呪いにより経済破綻に陥った国の事例を3つご紹介します。

ナウル

ナウル共和国は、オセアニア地域に位置する世界で3番目に面積の小さな独立国家(東京都品川区と同等の大きさ)です。島全体がリン鉱石でできており、19世紀後半から採掘を開始。1980年代にはアメリカ(当時)の約1.5倍のGNPを誇り、太平洋地域で最高水準の生活レベルを享受します。

採掘労働は外国人に任せ、公共料金や税金は全て無料。国民の9割が無職という生活が約30年続きました。一方、採掘により島の約8割で居住・耕作ができず、食料・生活物資は輸入に頼りきりに。リン鉱石に依存した経済構造となっていきました。

1990年代後半にリン鉱石が枯渇すると、ナウルの経済状況は一気に悪化します。マネーロンダリングや他国からの資金援助に頼る状況が問題になるなか、政府は財政を立て直すために2004年から改革を実施。2005年からはリン鉱石の2次採掘が開始され経済状況は改善傾向にあります。しかし、リン鉱石の埋蔵量は約30年分と言われており、その後の経済対策が急務となっています。

ベネズエラ

ベネズエラは、南アメリカ大陸北部に位置する世界最大の石油埋蔵国です。1914年に油田が発見されて以降、1970年代に二度の石油危機を経て南米の地域先進国となりました。しかしその一方で、政治情勢は長期に渡り不安定で石油への依存度が非常に高く、独自の工業化が進んでいないという特徴があります。

原油価格高騰が起こった2000年代にはチャベス大統領のもと反米主義を展開し、社会主義的政策に転換。豊かな石油収入を背景に、貧困層に対する教育・医療・住宅の無償化を行い、経済・資源ナショナリズムを進めます。しかし、2014年下期から原油価格が暴落し、石油に依存した経済は急激に悪化。2019年には、経済成長率は前年比マイナス25%、インフレ率は1000万%超、失業率は40%を超え、外貨不足による食料・医薬品の欠乏・略奪などの治安悪化の他、難民の増加・他国からの多額の借入れなどの問題が起こっています。

ナイジェリア

ナイジェリアはアフリカ大陸西南部に位置する世界有数の産油国で、アフリカ屈指の経済大国です。1970年代から石油輸出により大きな収益を上げる一方、通貨高によって元来の輸出品であるココアやピーナッツなどの生産農家が衰退。産油国にも関わらず製油所の不備が原因で原油を精製できず、ガソリンなどの石油製品は輸入に依存しています。

財政収入の約8割を石油輸出でまかない、税収入を軽んじることから政治汚職が横行。適切な投資や公益事業が行われず、石油の恩恵は国民に還元されません。未だインフラやガソリン不足に陥っており、貧困に苦しむ人々が多く存在します。

石油依存度が高いことから、1986年や2014年の石油価格暴落で経済は一気にマイナス成長となり、生活水準や治安が悪化。経済の多様化が急務であり、資源の呪いの典型的な事例となっています。

貧困地域を支援する手段として

資源の呪いの事例から、資源国であっても政治汚職や脆弱な経済構造が原因で、経済成長が停滞し貧困に苦しむ人々が多く存在することがわかりました。

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